すずの兵隊
美しききみは唯一の欠落をもて吾(あ)の欠落つひに鎮めり
戯れの箱にひそむは鬼にあらず吾(われ)らのさだめのカノープスなり
濁りたる水の魚や鼠などきみに似合はぬ吾(あ)の内留めむ
ひとすじの光にまぶたを開けたればきみ恋ふこころも目を醒ましけり
暖かき部屋にて踊れ可憐なるきみよ弛(たゆ)まずただひとりきり
頼りなき紙の舟の上かの鬼は弱き己の裏側なりけむと
スプウンより生(あ)るるからだで如何にしてきみをすくふかなづむ夕べに
隊列の最後に並ぶ弱き吾(あ)に生命(いのち)与ふるきみの微笑み
焔の指より先にきみを胸に抱き成就せむとす帰還の理由
少年の思ひ出に棲まむ失はれしふたつの玩具の幻となり
07/27/2010